穴掘りタイム

穴掘りタイム

スコップを握りしめ、地面を掘っている。穴は、ちょうど頭が出るくらいの深さになっていた。
手のひらは、少し赤くなりジンジンする。

顔を穴の外へと向ける。
地平線が見えるほど周りには何もない、サバンナのような光景が広がっていた。空は晴れ渡っていたが暑くはない、春の陽気を思わせる気候だった。
酸味の混じった乾いた土の匂いが、辺りに漂っている。穴の横には、掘った分の土が積み重なり山になっていた。名前も知らない虫が、山の頂上を目指して静かに進んでいる。

再び顔を穴の方へと向ける。
ズァッ、ズァッ、ズァッ…。時計が時を刻むように、一定のリズムで地面を掘っていく。次第にこのリズムが身体に浸透し、浸透するほど時間の感覚は色褪せていった。

しばらく掘っていると、スコップから伝わる衝撃が、急に重くなる。
土の色が赤褐色からこげ茶色へと変わっていた。
穴は、頭がすっかり隠れるくらいまで深くなっている。見上げると窮屈に収まった青空だけがポッカリ見える。遠くで獣の低く通った声が聞こえ、意識が一瞬穴の外へと流れた。

意識を穴の中へ戻し掘り始めると、カーンという音と共に地面から弾き返された。
いかにも重そうな石が、行き先を阻むように横たわっている。スコップで石の頭を二度軽く突き、唇を歪める。肩を上げ、重力に任せて落とし、息を大きく吐いた。

わずかな沈黙の後、再びスコップを地面に向ける。石の表面をなぞるように、斜め下へと掘り進む。
石は、印象に感じるほど大きなものではなかった。

ふと、空に目を向ける。
さっきまで、青かった空がオレンジ色に変わっていた。